無期転換ルールの裁判例

厚生労働省は「無期転換ルール及び多様な正社員等の労働契約関係の明確化に関する考え方と裁判例」をとりまとめ、これを公表しました。

この資料は、有期雇用から無期雇用への転換ルールや、労働条件の変更、および解雇の妥当性に関する法的な考え方を裁判例と共に解説した実務的な指針です。
 

無期転換ルールとは?

同じ会社との間で、期間の定めのある労働契約(有期労働契約)が更新されて通算5年を超えた場合、労働者が申し込むことで、期間の定めのない契約(無期労働契約)に切り替わるルールのことです(労働契約法18条)。
これにより、労働者は「契約が更新されないかもしれない」という不安から解放されます。

主なテーマとして、契約更新への合理的な期待がある場合に雇用主が一方的に上限を設けることの不当性や、無期転換権の行使を妨げる行為が公序良俗に反し無効となる点が強調されています。
また、賃金の減額や配置転換といった不利益な変更には、労働者の自由な意思に基づく合意が客観的に認められる必要があり、単なる署名捺印だけでは不十分とされる基準が示されています。

全体を通して、紛争を未然に防ぐために、使用者が説明責任を果たし書面化することの重要性と、労働契約法の趣旨に則った信義誠実な対応を求めています。
 

―「無期転換ルール及び多様な正社員等の労働契約関係の明確化に関する考え方と裁判例」から抜粋―

期転換申込権が発生する直前に行われた雇止めが争われた裁判例として、「公益財団法人グリーントラストうつのみや事件」(宇都宮地判 令和2年6月10日)を紹介します。
この事案では、有期契約労働者が**6回目の契約更新を拒絶(雇止め)**されたことに対し、労働契約上の地位の確認などを求めて提訴しました。
裁判所は、以下のポイントを挙げて、この労働者には契約更新への「合理的な期待」が生じていたと判断しました。
• 従事していた業務が常用的なものであったこと。
• 雇用期間の定めが名目的(形だけ)なものになりつつあったこと。
• 更新の手続きが形式的なものであったこと。
結果として、この雇止めには客観的に合理的な理由がなく、社会通念上相当ではない(認められない)と結論付けられました。
さらに重要な点として、この労働者は無期転換の申し込みを行っていたため、裁判所は労働契約法18条1項に基づき、無期労働契約が成立したものとみなしました。
つまり、雇止めを無効としただけでなく、期間の定めのない契約への切り替わりを認めたのです。
この事例は、無期転換申込権の発生を回避するために合理的な理由なく雇止めを行うことは許されないということを明確に示しています。

厚生労働省 「無期転換ルール及び多様な正社員等の労働契約関係の明確化に関する考え方と裁判例」を公表しました