年休を取らせることは会社の義務?!その2
2019年4月1日改正の労働基準法第39条
今回、39条に追加された項目を中心にわかりやすく解説いたします。
①制度の対象者は年休付与日数が10日以上の社員
10日以上の年休の範囲に第39条第3項(比例付与)が含まれているため、入社当初の付与日数が10日に満たないパートタイマーであっても、
勤続により付与日数が10日以上となったときから対象者となる点に注意
が必要です。
②年休を5日以上取らなかった社員一人当たり30万円の罰金
使用者による「その時季を定めることにより与えなければならない」義務は、「労働者ごと」に生じるため、罰則の適用も社員一人につき法違反が成立する
と解されています。すなわち、一人当たり30万円です。
また、「5日を与える」義務なので、仮に年休を年4日しかとっていない社員が
1人でもいたならば、それだけで法違反が成立します。
③会社が社員に「年休の取得を強制する」ことはできない
「(使用者は、)その時季を定めることにより与えなければならない。」とあり、社員が年休を取得する義務ではなく、会社が付与する義務として規定されている点
に注意が必要です。
また、次のような規定が平成30年9月7日公布の省令で定められています。
会社は、社員に対し、一方的に時季指定義務を履行することはできず、
あくまでも本人の意思を尊重しなければならないということです。
いいかえるなら、会社が年休取得を社員に強制するようなことがあれば、
社員が有する権利侵害として「ハラスメント」案件にもなりかねません。
くれぐれもそのような規定を就業規則に定めないようにしてください。
④社員が自ら年休を取得した日数は、強制付与すべき日数から除くことができる
社員が自ら取得した年休、第6項は計画的付与を指します。社員が3日取得したとすると、使用者の義務は3日分免除されますが、
なお2日分については義務不履行が問われるのです。
結局「強制」というよりは、会社が社員に年休の取得を「お願いする」制度というわけです。
会社は、1年ごとに年休を付与しながら、同時にその1年のうちに5日取得してもらうよう、
あの手この手を講じることとなります。